とある小さな町の飲み屋街に、「ウーパー」というあだ名のホステスさん（２０代半ば）がおりました。そう言われてみれば、目と目の間の距離が広く、ウーパールーパーに似ています。彼女自身が、「ウーパーと呼んでほしい」と言ってましたので、失礼ながら、文章では、以後、そう呼ばせて頂きます。ただ、そうは言っても、ホステスさんの仕事が出来るぐらいの器量なので、顔全体としては、男にモテる感じがする娘でした。実際、彼女目当てに、4日連続で店に通い詰める若い男もいたぐらいです。高校時代は、いつも、男の子たちと一緒につるんで遊んでいたので、同級生の女の子たちにねたまれ、イジメられたそうです。  高校卒業後、この娘は、舞台女優を目指して、誰もが知る有名劇団に所属しましたが、競争が激しく、そこで生き残るのが難しかったようです。彼女は、夢をあきらめ、知り合いの紹介で交際した同じ年の男と、やがて同棲するようになります。その男は、高校時代、格闘技系の部活だったので、いい体をしていたそうです。そして、そのままゴールインするかと思いきや、この男は、だんだん、「悪の本性」を現し始めるのです。  まずは、浮気です。男からが来ればに出るが、女からの場合はに出ない。なにか、やましい事があるのでしょう。まあ、結局、浮気をしていた事が判明しましたが、一回目の浮気は許したそうです。と、と、ところが、その後、とんでもない事実が判明するのです。数十人の女に、自分自身（男自身）も勝手に使えるようなクレジットカードを作らせ、それらのカードで、計３００万ほど、借金をしていたのです。もちろん、債務を負っているのは、その数十人の女たちです。ウーパーちゃんは、その男を畳の上に正座させ、「お前は、何をやってんだ。まずは、女一人一人に謝罪して、金を全て返済しろ・・・・・」と説教したそうです。また、「男の高校時代の部活の先輩」と「男」と「ウーパーちゃん」の三人で、レストランに行った時、ウーパーちゃんが先輩（ウーパーちゃんにしたら、彼氏を悪の道に引きずり込もうとしていた憎き輩）にあまりにも不愛想だった為、男は先輩の手前、ぶち切れ、店の外に出た後、ウーパーちゃんが着ていた帽子付きのパーカーをつかんで、コンクリートの地面にたたきつけ、さらに、髪の毛をつかんで引きずり回し、車がビュンビュンと行き交う車道へ放り投げたそうです。専門的には、この時点で、未必の故意（簡単に言うと、死ぬかどうかは分からないが、死んでも構わないという気持ち）が認められるので、男は、殺人未遂罪（殺人罪と同様に扱われますので、死刑、無期、もしくは、5年以上の懲役に課す、という事に・・・）に問われても文句は言えない状況です。ウーパーちゃんが、最後の優しさで男をかばった可能性があります。その時、たまたま、車が急ブレーキをかけてくれ一命をとりとめましたが、ウーパーちゃんは、放り投げられて、目前に車を見た瞬間、「あっ、死んだ・・・・・」と思ったらしいです。ウーパーちゃんは、暴行を受けている途中で意識が何度か飛んでおり、その時の事を全ては記憶していないそうですが、大きな鏡が割れており、おそらくは、その大きな鏡にも、叩きつけられたのだと思います。両目の目じりから出血し、頭が大きく腫れていたらしいです。化粧でうまく隠しているものの、今でも、その時の傷が顔面に残っているそうです。ウーパーちゃんは、もう、その男と関わり合いになりたくないので、慰謝料請求すらしなかったらしいです。その男とは、すでに別れたそうですが、その話を聞き終わった後、必殺仕事人のエンディング曲・鮎川いずみさんの「花の涙」を歌ってあげたら、一番と二番の「さび」の所で、ウーパーちゃんの目に涙が浮かんできて、「歌をストップしてほしい・・・・・」と、半泣きになりながら某に懇願してきました。こんな状況で、笑っちゃいけないんですけれど、涙と鼻水で化粧がぐちゃぐちゃになったウーパーちゃんの顔を見たら、笑いがこみあげてきて、歌どころではなくなりました。その結果、期せずして、歌の三番をストップする事になったのであります・・・・・（笑）。
   ＊サイズ・・・８ｘ６ｘ４ｍｍ